2階の買取カウンターを担当していたのは二人でした。老舗だけにお客様は毎日相当数来ますし、これだけ手作業が多いのだから、たった二人で手が回るはずがない。自然に雑用がいっぱいたまっていきます。だから、私がトイレにかこつけて2階に上がっていると「どうせしょっちゅう来るんだから手伝え」と言われ、そういった雑用を手伝うようになりました。特にお客様が多くて忙しい日などは、「あいつ呼んできて」と呼び出されることもしばしば。もちろんまだ一番下だから、知識もなければ経験もない。何も認められてないのに、ただしょっちゅう来るから、という理由だけで2階に呼んでもらえるようになったのです。まさにドサクサに紛れて、という形です。とはいえ、行ったら行ったで見るものすべてが珍しく、梱包なんて命じられたら大変。初めて見る超高級時計に「うわ、すごい!」とボーッと見とれては、「何してんだ、早くしまえ!」なんて呆れながら叱られたりしたものです。こうして、新人社員の通常ケースを超え、質屋で質買取の現場を間近に見られたことは、私にとって本当に新鮮で刺激的な経験でした。