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日本人の風呂好きには高温多湿な夏に汗ばんだ身体を洗い流したいという欲求が強いという風土的要因もあろうが、日本人の入浴観はそうした生理的欲求を超えて、風呂に何か精神的な効用を求める域に達しているようで、その気分が、たかが風呂の湯に「いい」という曖昧にして絶対肯定的な形容詞を冠する慣用表現を生んだのではないかと思われる。日本語で「いい湯」というのは家庭内でも日常的に使われる表現で、たとえば、先に風呂に入った妻が夫に向かって「いいお湯よ、早く入れば」と言うのはごくありふれた場面である。

[参考]
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独りごとの場合でもそうだが、この“いい”には生理的快感以上の精神的な解放感への感慨がこめられている。これは、フィンランドのサウナはまあ別として、少なくとも普通のバスに対する欧米人の入浴感覚にはないものだ。日本人のこういう特殊な風呂好みを考えると、日本の戦後的生活様式が椅子、テーブル、べッドを使ういわゆる洋風化を遂げたとはいえ、お風呂については欧米をお手本にするわけにいかない。檜の浴槽がホーローに変わり、薪をたく風呂釜がガス給湯機に変わっても、浴室はあくまで欧米とは異なる日本的な形式を保ちつづけるものと思われる。

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